2022-01-01から1年間の記事一覧

名残の空

霽(は)れてゆく 名残の空と なりにけり 大文字形ばかりの大掃除を済ませ、年越しそばも食べ、あとは除夜の鐘を聞くばかりです。今年も「天文古玩」にお付き合いいただき、ありがとうございました。年末は少ししおらしい記事を書きましたが、来年はモノとの…

惣める話

昨夜夢を見ました。なにか気の利いた博物趣味の品を探しに行く夢です(ここに昨日の記事が影響しているのは確実です)。でも、お目当てのデパートに着いても、その売場が思い出せず、「あれ?以前ここで買ったのは夢だったのかな?いや、でも買ったときの記…

驚異の部屋にて

先日、所用で東京に行ったついでに、しばらくぶりに東京駅前のインターメディアテク(IMT)を訪ねました。この日は一部エリアが写真撮影OKだったので、緑の内装が美しい「驚異の小部屋・ギメルーム」で盛んにシャッターボタンを押しながら、かつて東大総合研…

雷の化石

雷にも大きいもの、小さいもの、いろいろありますが、中でもとびきり大きいやつがドーンと砂地に落ちると、そこが瞬間的に高温となって珪砂が溶融し、それがまた冷却固化することで、雷が砂地を走り抜けた形のままに、筒状の構造物が残ります。それが「フル…

一枚の星座早見盤が開く遠い世界

皆さんのところにサンタクロースは来ましたか?私のところにはちゃんと来ました。今年、サンタさんから届いたのは一枚の星座早見盤です。これは世界にまたとない品です。なぜならこの早見盤が表現しているのは、紀元137年のアレクサンドリアの星空なのですか…

雪の森、星の林

強い寒気が襲来し、各地で大雪だと天気予報は告げています。私の住む町でも初雪。そしていきなりの大雪警報です。雪に降り込められたおかげで、今日は一日静かに過ごせそうです。記事のほうものんびりした気持ちで再開します。 ★マックノートさんの星図ガイ…

歳末に厄を拾う

このところPCがずっと不調だったのですが、とうとうダメになりました。その症状は特徴的で、最初はディスプレイにピンクの横線がチラチラ何本か入るところから始まります。じっと見ていると、その横線が徐々に増えて、ついには画面全体がピンクになり、やが…

賢治と土星と天王星

先日話題にした、賢治の詩に出てくる「輪っかのあるサファイア風の惑星」。(詩の全文。元記事 http://mononoke.asablo.jp/blog/2022/12/13/9547757)コメント欄で、件の惑星は、やっぱり天王星という可能性はないだろうか?という問題提起が、S.Uさんからあ…

夜の散歩

先週の話です。空には明るい月のそばに、赤い星が2つ並んでいました。ひとつは火星、もうひとつはおうし座のアルデバランです。月の光に負けないアルデバランも1等星の見事な輝星ですが、最接近を遂げたばかりの火星は、さらにそれを圧倒する明るさで、ぎら…

青く澄んだ土星(後編)

(昨日のつづき)特にもったいぶるまでもなく、サファイヤと土星で検索すると、現在大量にヒットするのは「サファイアは土星を支配する石だ」という占星術的解釈です。私は今回初めて知ったのですが、これだけヒットするということは、占星術やパワーストー…

青く澄んだ土星(前編)

先日、天王星を思わせる青いブローチのことを記事にしました。(元記事 http://mononoke.asablo.jp/blog/2022/11/10/9539975)それに対して、透子さんからコメントをいただき、そこで教えていただいたことが気になったので、ここで文字にしておきます(透子…

アルビレオ出版からの贈り物:ボーデの『星座入門』

悲惨なことばかりでなく、心の浮き立つことも書きます。ケルンのアルビレオ出版から、お知らせのメールが届きました。アルビレオ出版のことは以前も書きましたが、ずいぶん前のことなので、改めて説明すると、ここは天文古書や古星図の美しい複製を制作販売…

人鳥哀歌

いささかくたびれました。漢字で書けば「草臥れた」。実際、作業の合間に草むらに腰を下ろして、しばし無言でいました。作業というのは、例の鳥インフルの対応です。先年も豚コレラ(豚熱)で駆り出されましたが、今度は鳥インフルです。白い防疫服の一団が…

新暦誕生(後編)

昨日の記事の冒頭で、明治6年(1873)に日本中がいっせいに新暦に切り替わった…と書きました。でもそれはウソです。いや、ウソとは言いませんが、事実はかなり様子が違いました。以下、渡辺敏夫氏の『日本の暦』(雄山閣、昭和51)からの引用や孫引きをまじ…

新暦誕生(前編)

昨日につづいて明治改暦の話題。今から150年前――正確には1873年の元旦に――、それまで馴染んでいた旧暦(太陰太陽暦)から、日本中がいっせいに新暦(太陽暦、グレゴリオ暦)に切り替わりました。その記念すべき最初の暦、「明治六年太陽暦」がこれです。昨日…

明治改暦によせて

私の職場のエレベーターは、乗っている人を退屈させない工夫なのか、「今日は何の日?」というのがパネルに表示されます。それによると、昨12月3日は、明治改暦の日でした。すなわち、明治5年(1872)12月3日を以て太陰暦(いわゆる旧暦)を廃して、現在の太…

クロウフォード・ライブラリーを覗き込む

今年イギリス国王になったチャールズは、皇太子時代に「プリンス・オブ・ウェールズ」を名乗っていました。個人の名前と称号は当然別物で、皇太子が替われば、自動的にプリンス・オブ・ウェールズが次の皇太子に引き継がれる仕組みのようです。同様に「クロ…

あおみどりの光

昨夜は本降りの雨でしたが、気まぐれで遠回りをして帰りました。雨に濡れた路面に映る灯りがきれいに感じられたからです。乾いた町が水の中に沈み、いつもと違う光を放っているのが、夕べの心の波長と合ったのでしょう。店舗の灯り、道路に尾を曳くヘッドラ…

ゼロの方程式

今日、天文学史のメーリングリストに変わった投稿がありました。現在、中国各地で習政権による「ゼロ・コロナ政策」への激しい抗議活動が起きていますが、デモの参加者は、何かメッセージを掲げても、報道の際は検閲で削除されてしまうので、最初から白紙を…

フリッチ兄弟の夢、オンドレジョフ天文台(後編)

(今日は2連投です。)フリッチ兄弟の父親は、詩人・ジャーナリストであり、チェコの愛国者にして革命家としても著名な人物だった…という点からして、なかなかドラマチックなのですが、二人はパリで少年時代を過ごし、プラハに帰国後、兄は動物学と古生物学…

フリッチ兄弟の夢、オンドレジョフ天文台(前編)

絵葉書アルバムを見ていて、ふと目に留まった1枚。表側に何もキャプションがないので、何だかよく分からない絵葉書として放置されていましたが、改めて眺めると、なかなか雰囲気のある絵葉書です。古びたセピアの色調もいいし、全体の構図や光の当たり方、そ…

『星学手簡』

しばらく、ひそかにミモザ(オジギソウ)問題に集中していました。ミモザが登場するはずのないギリシャ神話に、なぜミモザが出てくるのか?さらにコメント欄で指摘のあった、「みなみじゅうじ座β星」の固有名である「ミモザ」の由来は何か?しかし、いろいろ…

オジギソウとギリシャ神話

(オジギソウ Mimosa pudica. ウィキペディアより)オジギソウが葉を閉じるのは、虫の食害を逃れるためだ…という研究成果を、先日ニュースで見ましたが、これに関連して、中日新聞の一面コラム「中日春秋」に、次のような文章が載っていました(11月19日)。…

たむらしげるさんのこと

前回の記事の末尾で、たむらしげるさんの名前を出しました。そのたむらさんに関して、今年の6月に『たむらしげる作品集』(玄光社)が出ています。(厚みはこれぐらい。何綴じというのか、各ページを見開きフルオープンにできる製本形式になっています。)章…

「あなたより天文古書に恵まれた人知りませんか」

今朝は晩秋を越えて、初冬の趣がありました。今日は仕事を昼で切り上げ、帰りがけに自然緑地を生かした公園を歩いたのですが、林の中は国木田独歩の『武蔵野』さながらで、心に凛としたものを覚えました。〔十一月〕十九日――「天晴れ、風清く、露冷やかなり…

天文時計の幻を追って

アンティークの天文時計を所有することは、憧れではあっても、現実的な目標とは言えません。それはずばり手の届かぬ花です。では、せめて雰囲気だけでも…と思って、5年前にこんな品を見つけました(現物は棚の奥なので、以下、購入時の商品写真を借用)。エ…

ジョージ星辰王

天王星といえば、その発見者であるウィリアム・ハーシェル(1738-1822)の名が、ただちに連想されます。そればかりでなく、19世紀後半に「ウラヌス」の名称が定着する以前は、天王星そのものを「ハーシェル」と呼ぶ人がおおぜいいました。この名は主にフラ…

胸元のブループラネット

「青い惑星」といえば地球。そして、この前多くの人が目撃した天王星もまた青い惑星です。地球の濃い青は海の色であり、豊かな生命の色です。一方、天王星の澄んだ青は、凍てつく水素とメタンが織りなす文字通りの氷青色(icy blue)で、どこまでも冷え寂び…

月蝕日和

昨夜の皆既月食は、寝そべって見るのにちょうどよい角度だったので、これ幸いと畳の上にゴロンと横になって、双眼鏡を手にジーッと月の変化を眺めていました。地球がかぶっている「影の帽子」の中に、じりじりと滑り込む月を眺めていると、月の公転運動や、…

世界内存在する書斎

本を積み上げて、狭い部屋をますます狭くし、その片隅で、灯りに舞い飛ぶ埃をぼんやり眺める。まことに小市民的な逸楽です。まあ「逸楽」と言った時点で、若干ネガティブなニュアンスがまじりますが、これは確かに平和な日常であり、私にとってはかけがえの…